COLUMN

黄変しにくいPPFの選び方|芳香族TPUと脂肪族TPUの違い

素材の話

「黄ばんだ」というクレームはなぜ起きるのか

PPFに関するトラブルのうち、施工店様にとって説明が難しいものの一つが黄変です。貼った直後はきれいでも、1〜2年で透明フィルムが黄色みを帯びてくる。白い車やシルバーの車では、とくに目立ちます。

この現象は施工の巧拙ではなく、原料であるTPUの化学構造で、ほぼ決まってしまうものです。つまり、どのフィルムを仕入れるかという段階で結果の大部分が決まります。逆にいえば、仕入れの時点で押さえるべき点さえ分かっていれば、避けやすいトラブルでもあります。

TPUには2種類ある|芳香族と脂肪族

PPFの本体に使われるTPU(熱可塑性ポリウレタン)は、原料に使う「イソシアネート」の種類によって、大きく2つに分けられます。

芳香族TPU(MDI/TDI系)

  • 分子内にベンゼン環を含む構造
  • 紫外線を受けるとベンゼン環が酸化する
  • 黄色〜褐色への変色が進み、元には戻らない
  • 比較的安価。靴底・ホース・発泡材など、屋外で長時間紫外線にさらされない用途で広く使われる

脂肪族TPU(HDI/H12MDI系)

  • 分子内にベンゼン環を含まない構造
  • 紫外線を吸収しても、変色のもとになる構造ができにくい
  • 長期間、透明性を保ちやすい
  • 価格は高め。PPFなど屋外で長く使う用途に採用される

「ベンゼン環」は、炭素が六角形につながった化学構造のことです。この構造が紫外線に反応しやすく、黄変の出発点になります。ベンゼン環があるかないか。それが、黄変するかしにくいかの分かれ道だと理解しておけば十分です。

脂肪族TPUを高い品質で安定して作れるのは、世界でも限られた数社しか製造できない高品質TPU原料のメーカーに限られるとされています。PPF向けのフィルムで価格差が生まれる大きな理由の一つが、ここにあります。

黄変が進む4つのステップ

芳香族TPUで黄変が起きるまでの流れは、次のように整理できます。

芳香族TPUが黄変するまでの4ステップ:1 紫外線が当たる、2 ベンゼン環が酸化する(芳香族のみ)、3 色のもと(発色団)ができる(芳香族のみ)、4 黄変・劣化が進む。脂肪族TPUはベンゼン環を持ちません。
STEP 1
紫外線が当たる
屋外駐車や走行中、太陽光に含まれる紫外線がフィルム表面に届きます。
STEP 2芳香族TPUのみ
ベンゼン環が酸化する
芳香族TPUの場合にのみ起きる反応です。脂肪族TPUではこの段階が生じません。
STEP 3芳香族TPUのみ
色のもとができる
発色団(キノイド構造)と呼ばれる、色を帯びた構造がつくられます。
STEP 4
黄変・劣化が進む
見た目が黄色〜褐色に変わります。同時に分子鎖の切断も進むため、フィルムが硬くなったり、剥離しやすくなったりすることもあります。色の変化は元に戻りません。
脂肪族TPUはベンゼン環を持たないため、この経路での黄変は起こりにくいとされています。

※ 進行の速さは、駐車環境・地域・年間の日照条件などによって大きく変わります。上記は仕組みの説明であり、特定の年数を示すものではありません。

もう一つの分かれ道|ソフトセグメントの種類

TPUは、硬い部分(ハードセグメント)と柔らかい部分(ソフトセグメント)が交互につながった構造をしています。黄変を左右するのは主にハードセグメント側ですが、ソフトセグメントの種類は「加水分解のしにくさ」を左右します。高温多湿な日本の夏を考えると、こちらも見落とせない観点です。

ソフトセグメントの種類特徴
ポリエステル型比較的安価。ただし高温多湿の環境では加水分解が進みやすいとされる
PCL型
(ポリカプロラクトン)
低温での柔軟性と、水分による分解のしにくさに優れる
ポリエーテル型水分による分解には強いが、機械的な強度はやや劣るとされる

← 表は横にスクロールできます

SHINSHUN FILMが取り扱う透明PPF(B701)は、PCL型の脂肪族TPUを採用しています。

促進耐候試験(QUV)で見る差

黄変のしやすさを比べる方法として、紫外線を人工的に強く当て続ける促進耐候試験(QUV試験)があります。変色の度合いは YI(黄変指数) という数値で表され、値が大きいほど黄色く変化していることを意味します。目安として、10以下であれば問題のないレベル、40以上になると肉眼ではっきり分かるレベルとされています。

芳香族TPU(500時間後)
YI=45(肉眼で明確に黄変)
脂肪族TPU(1,500時間後)
YI=8(変化が見られない)

※ 促進耐候試験の一般的な比較データをもとにした参考値です。試験条件により結果は異なります。また促進試験は実際の使用環境における経年変化を保証するものではありません。

性能項目芳香族TPU脂肪族TPU
黄変耐性(UV 1,000時間)YI約40以上(明確に黄変)YI約8以下(変化が見られない)
黄変の進み方速い遅い
弾性の維持紫外線劣化で硬化・割れが起きやすい長期間、弾性を保ちやすい
紫外線対策の考え方添加剤で対処(効果には限りがある)構造そのものが安定している

← 表は横にスクロールできます

仕入れるときに確認したい5つのポイント

カタログに「高品質TPU使用」とだけ書かれていても、判断材料にはなりません。次の5点を確認すると、黄変のリスクを見極めやすくなります。

まとめ

PPFの黄変は、施工技術ではなく原料の化学構造で大きく決まります。ベンゼン環を含む芳香族TPUは紫外線で変色が進み、含まない脂肪族TPUは透明性を保ちやすい。この一点を押さえておけば、仕入れ判断でもお客様への説明でも軸がぶれません。

ただし、どのようなフィルムでも屋外環境での経年変化がまったく起きないわけではありません。駐車環境や地域によって条件は異なりますので、お客様には「黄変しにくい素材を選んでいる」という形でお伝えいただくのが、後々のトラブルを避ける伝え方になります。

FREE SAMPLE

素材の違いは、実物で確かめるのが一番です

SHINSHUN FILMは、IATF 16949認証取得工場で製造されたPPF・改色フィルムを、施工店様へ1本から卸しています。出荷ロットごとに検査報告書(COA)を添付しています。ご注文・お見積り・無料サンプルのご依頼は、下のフォームからお気軽にどうぞ。

無料サンプルのご請求・お問い合わせ  →