COLUMN
PPF(プロテクションフィルム)の基礎知識|5層構造とTPUの役割
PPFとは何か
PPFは Paint Protection Film(ペイントプロテクションフィルム)の略で、塗装面に貼り付けて飛び石や擦り傷から塗装を守る透明フィルムです。厚みはおおむね150〜200マイクロメートル(μm、1μm=1000分の1ミリ)前後の製品が中心で、コーティングのような「被膜」ではなく、フィルムという物体を1枚かぶせるのが最大の違いです。
お客様からは「透明なシールのようなもの」と受け取られがちですが、実際には役割の異なる層が重なった多層構造になっています。この構造を知っておくと、「なぜ守れるのか」「なぜ傷が消えるのか」を筋道立てて説明できるようになります。
主原料のTPUとはどんな素材か
PPFの本体部分に使われているのが TPU(Thermoplastic Polyurethane=熱可塑性ポリウレタン) です。「熱可塑性」とは、熱を加えると柔らかくなって成形できる性質のこと。TPUは、プラスチックの「熱で成形できる」性質と、ゴムの「伸び縮みする」性質を、あわせ持った素材です。
PPFの性能は、ほぼこのTPUで決まります。TPUがPPFに向いている理由は次のとおりです。
| TPUの特性 | PPFにおける意味 |
|---|---|
| 高い伸縮性 (200〜400%超) | バンパーなど複雑な曲面にも、シワを出さずに追従させやすい |
| 自己修復性 | 柔らかい部分が熱で動くことで、軽い擦り傷が目立たなくなる |
| 高い引張・引裂強度 | 飛び石やこすれ傷といった物理的なダメージに強い |
| 透明性 | 塗装本来の質感・発色を損ないにくい |
| 耐候性 (TPUの種類による) | 屋外での長期使用に耐えやすい。種類によって差が大きい部分 |
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同じ「TPU」でも、原料の組み合わせによって性能は大きく変わります。とくに屋外で長く使う用途では、黄変しにくい種類のTPUが使われているかどうかが分かれ道になります。詳しくは 黄変しにくいPPFの選び方 をご覧ください。
TPUの性能を決める「ハード」と「ソフト」
TPUの分子は、硬いブロック(ハードセグメント)と柔らかいブロック(ソフトセグメント)が交互に連なった構造をしています。この2つの配合バランスで、硬さ・伸び・耐久性が決まります。
ハードセグメント
- イソシアネート+鎖延長剤からできる部分
- 強度・耐久性を担う
- 形状の安定性を保つ
ソフトセグメント
- ポリオールからできる部分
- 伸縮性・柔軟性を担う
- 自己修復性に関わる
自己修復は「傷が魔法のように消える」わけではありません。熱によってソフトセグメントが動き、表面の浅い凹みが元の形へ戻る現象です。したがって、塗装まで届いた深い傷や、欠けてしまったチッピングは対象外になります。この線引きを最初に伝えておくと、施工後のトラブルを避けやすくなります。
PPFの層構造(図解)
PPFは、TPU1枚のフィルムではありません。下図は、施工前の製品を断面で見たイメージです。上が外側(空気に触れる面)、下が塗装面に接する側です。
※ 層の構成・呼び方は、メーカーや製品グレードによって異なる場合があります。上図は一般的な構成の目安です。
各層が担っている役割
1. トップコート(自己修復・撥水/防汚)
一番外側にある層で、傷や汚れから守る最前線です。おおむね60℃・60秒程度の熱(夏の日差しや、かけたお湯など)で、軽い擦り傷が元に戻る自己修復機能は、この層が担っています。あわせて疎水・防汚の処理がされている製品も多く、水や汚れをはじきやすくなります。修復にかかる時間や温度の条件は製品によって異なるため、数値は目安としてお考えください。
2. TPU基材層(フィルムの本体)
PPFの本体となる層です。高い伸縮性で曲面に密着し、引張強度・引裂強度によって飛び石などの衝撃から塗装を守ります。黄変のしにくさも、この層に使われるTPUの種類で決まります。厚みの表記(mil)が指しているのも、基本的にはこの基材層を含めたフィルム全体の厚さです。
3. 粘着剤層(糊)
塗装面にフィルムを貼り付ける層で、圧力で貼り付くタイプの感圧接着剤(PSA)が使われます。施工中に位置を微調整できる再剥離性と、長期間貼っても糊残りしにくい設計を両立させることが求められる、施工性を大きく左右する層です。
4. 保護用ライナー/離型紙
0番と4番の層は、製品としての性能には関わりません。輸送・保管の間にトップコートや粘着剤をホコリや傷から守るためのもので、保護用ライナーは施工前に、離型紙は貼り付ける直前にそれぞれ剥がして廃棄します。
お客様へ説明するときの伝え方
構造の話をそのまま伝えても、お客様には伝わりにくいものです。次の3点に絞ると、短い時間でも納得いただきやすくなります。
- 「塗るもの」ではなく「貼るもの」ですコーティングは数μmの被膜、PPFは150μm前後のフィルム。厚みの桁が違うため、受け止められるダメージの種類が違います。
- 傷が消えるのは一番外側の層の働きです熱で戻るのは表面の浅い傷まで。塗装まで届いた傷や欠けは対象外である点を、先にお伝えしておきます。
- 剥がせば元の塗装に近い状態に戻せます塗り替えと違い、フィルムを剥がすという選択肢が残ります。リセールを気にされるお客様には響きやすい切り口です。
まとめ
PPFは、トップコート・TPU基材層・粘着剤層という3つの機能層を、保護用ライナーと離型紙で挟んだ構造をしています。守る力を担うのはTPU基材層、傷が消えるのはトップコート、貼りやすさを左右するのは粘着剤層。どの層が何を担当しているかを分けて理解しておくと、お客様からの質問にも落ち着いて答えられるようになります。
次のステップとして、その基材層に使われるTPUの種類による違いを 黄変しにくいPPFの選び方 で、カタログに並ぶ数値の読み方を PPFの厚み(mil)と保証年数の選び方 でそれぞれ解説しています。
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SHINSHUN FILMは、施工店様向けにPPF・改色フィルムを1本から卸しています。伸び・貼りやすさ・仕上がりは、資料の数値よりも実際に貼っていただくのが一番です。ご注文・お見積り・サンプルのご依頼は、下のフォームからお気軽にどうぞ。
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